28Jun
今回は3歳くらいのお子さんから楽しめるおススメ絵本をご紹介します。その絵本の名前は「てぶくろ」(エウゲーニー・M・ラチョフ作)です。写真のようにまず表紙からインパクトがあるこの絵本。少しレトロな感じがするのは、この絵本は1965年初版のウクライナ民話だからです。現代まで読み継がれるベストセラーとなっていますので幅広い年代の方が親しんでいる絵本です。
ここまで単純明快な話がほかにあるだろうか!?
この絵本のストーリーは本当にシンプル。舞台は冬の森。犬と一緒に狩りをしていたおじいさんがてぶくろを落としてしまいます。そこに色んな動物がやって来て次々にてぶくろの中にはいっていくというお話です。大人目線でこの絵本をみると、「てぶくろの中に入れる動物なんてせいぜい昆虫やカエル位なのに、なぜウサギやオオカミ、クマまで入れちゃうんだ!?」とツッコミどころ満載。
でも、子どもたちは違うのです。次々やってくる個性豊かな動物たちに興味津々!その理由の一つに実にリアルにちょっとコワモテに描かれた動物たちが挙げられます。カエルやウサギは実物も小さいので子ども達の表情もリラックスしています。でもキツネ、オオカミ・・・と段々大きくなるにつれてそこにドキドキ感が加わっていくのが見て取れます。そしてこんな疑問もわくのです。「あんなに怖そうな動物がやってきたけど大丈夫?怖くないの?」
動物たちのやさしさに触れられる絵本
かなり威圧的な態度でてぶくろに入れて欲しいと声をかける動物たち。小動物のウサギやカエルはさぞかし怖いんじゃないか、食べられちゃったらどうするの?という心配をよそに、アッサリと快諾するウサギたち。ここに、大きさなどの見た目や力の強さ弱さで判断せずに、「一緒にてぶくろの中であったまろう」という優しさに触れる事ができるのもこの絵本の大きな魅力の一つです。
また、この絵本ではてぶくろの中の様子が一切描かれてないため、想像力を掻き立てられます。どんな風にして動物はてぶくろの中にはいっているのだろう。狭そうだな。中で押し合いになっていないかな。ニコニコ笑っているのかな。ひとそれぞれの思いをはせることができるのも楽しいです。
そして現実世界にもどる
無事に全員がてぶくろに入る事ができました。この後おじいさんの犬がやってきててぶくろを発見し吠えます。その声に動物達は逃げ出してこの物語は終わりです。この描写にすごい仕掛けがされていることにお気づきですか?おじいさんが落としたテブクロにカエルが入る所から読者はファンタジーの世界に引き込まれます。そして、犬の鳴き声にびっくりした動物達が一斉に逃げ出し、てぶくろが空になったところで、私たち読者はファンタジーの世界から現実世界に戻ってくるわけです。まるで夢をみていたかのような感覚になれるこの絵本。長年世界中で語り継がれている理由がここにあると思います。